こばなし。

　うちのサイトからもリンクさせていただいている、「onion plus」のsaki 様の作られた現パロ設定をお借りして作っている小話です。
　

「棄権しましょう」
　
　戻ってきて敗北を詫びて、それから躊躇いもなく畢勝は言った。
　
「何を言っている」
　
　童貫は、却下した。
　髪を結わえて汗止めをつけ、既に着々と防具を着込み始めている。
　
「勝ってみせるなどとは到底言えんがな。しかし、やれるだけはやってみよう」
「そんな。お体が―――」
「此処で勝てば、全国行きだ」
　
　全国大会が始まる頃には、宿元景や豊美など真の選抜メンバーが復帰しているはず。補欠人員も本来なら充実している。戦力は大幅ＵＰして、全国制覇も狙えるのだ。―――この、地方大会最後の一戦さえ制することが出来れば。
　
「戦うことすら許されぬ悔しさなど、味わわせたくはない」
　
　尚も止めようとする畢勝を振り切って、童貫は立った。
　
　白い刺子の道着に濃紺の袴、防具は黒で、いっさい遊びは無い。―――シンプルな、剣士姿である。　
　対する敵方大将・楊令は道着も袴も、防具も全て漆黒。面鉄から流した紐だけが、鮮やかに紅い。
　
　
「「…………」」
　
　
　三戦の、勝負。
　時間内に有効打を二本取るか、もしくは取った一本を守りきれば一戦の勝ち。互いに取りきれなければ、判定となる。
　先に二戦を制した者が対戦の最終的な勝者。
　
　―――勝ち抜き戦で、大将同士の戦い。
　
　この対戦に勝った方の大学が、全国へ進む。
　
　
　互いに進み出て、一礼した。
　最後の試合が、始まる。