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徒然種々
思いつくままに。

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えと。


 女体化童貫さまの、話の続きです。
 
 
 
 

 
 
 
 
 

 
「貴方を持ち帰れるなら、俺も此処へ来た甲斐があったというもの」
 
 どうしようもなく空腹で、骨の髄から渇き餓えていた野獣(けもの)が、脚からとくとくと血を流し、蹲る獲物を眼前に見出しでもしたかのように。 
 双眸に獰猛な白い光を潜ませつつ、表面上は余裕綽々の、いかにも満足げな態度を示す。
 豊美は捕らえた童貫の躰を、自身の馬の鞍へと担ぎ上げようとした―――、が。 
 彼の背を、
 
「その人を放せっ!!」
 
 若々しい、まだ少年臭を色濃く残した青年の声が、低く叱咤した。
 
「ッ!?」
 
 童貫は、眼を見開く。
 
「楊、令…?」
 
 楊令。―――秦明に従えられ、童貫隊に続いて救援に駆けつけた部隊の、最年少の将校。養父の形見の剣を握り、構えて、童貫を捕らえた敵軍軍人を睨み据えている。 
 彼は、童貫と率いる部下とを隔てていた禁軍兵士の壁を強引に突破してきたらしい。自身も左肩を薄く手負いながら、鮮血にまみれた剣を豊美に突きつける。
 
「……ふっ」
 
 幽かに、豊美が嗤う。
 今さらながらの丁重なる手つきで、そのまま童貫を鞍に載せた。
 つぶやく。
 
「“あいつ”こそ、叛徒の部下どもなぞ放り出して、真っ先に駆けつけて来そうなものだが」
 
 それなのに、あいつ…畢勝ではなくこんな子どもが来たのか、と。
 くつくつと喉を鳴らす彼に対して、
 
「……来られて、たまるかっ」
 
 童貫は低く呻いた。
 そして、
 
「楊令!」
 
 叫ぶ。
 
「何をしている!」
「童貫どの、今―――」
「何をしているのだ、お前はッ! 双頭山の救援に来たのだろう!? こんな場所に拘っていてどうする!」
 
 敵将に囚われ、縛られて鞍に担ぎ上げられている。
 自身の窮状など気にも留めず、
 
「速やかに、部下の指揮に戻れ!」
 
 将校としての務めを果たせと、叱咤する。
 童貫の前で、
 
「…っ」
 
 実戦経験の浅い、まだ少年(こども)めいた若い将校は貌を強ばらせた。
 それを、
 
「…………」
 
 豊美は微苦笑の表情で剣を下げ、面白げに見つめている。
 己の好敵手でもあった畢勝ならばともかく、こんな子どもではそもそもこの童貫に逆らうこと自体出来まいと、揺れる楊令の内面を見透かしているようだった。
 
「……っ」
 
 実際、楊令は動揺していた。
 
 武芸の腕に、覚えはある。
 だから、敷かれた禁軍兵の壁の向こうに囚われの童貫を見出したとき、部下を支えの形で周縁に残し自身は一人、中へ突っこんだ。何としてでも、童貫を助け出すつもりだったのだが。 
 肝心の、救出すべき彼女こそが、余計なことをしている場合ではないだろうと、軍将校たる楊令に厳しい叱責を加える。
 
「戻れ、楊令!」
 
 
 苛烈な声。
 その、透徹した眼差し。
 
 ―――無条件に、従ってしまいたくなる。
 
 
 しかし、
 
「お断り…します!」
 

 

 

 

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