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saki 様、何時も設定を貸してくださって、どうもありがとうございます!
えと、しばらくサボってしまって不便と存じますが、そのうちきちんと目次記事に並べなおすつもりです。今日は昨日までのままですが……。
拍手してくださった方、どうもありがとうございました!!
「……ぐッ!!」
長駆から、即座に攻撃へ。
その疲れで、童貫の体力は既に限界だった。倒れる馬から、身軽く飛び退くことが出来ない。左足の鐙を蹴り放し、死馬の馬体に片脚を挟まれないようにするのが精一杯だった。
片手を手綱に取られたまま―――それでもどうにか受身だけは取って―――地面に半身を叩きつけられた。息が詰まり、武器が手から離れる。
「いやはや、まったく」
そんな童貫の傍に、立派な具足を着けた高級軍人が無造作に歩み寄った。童貫だけを取り込むようにして動いた弓兵の壁が、今度は彼を守るように周囲に展開する。
「姑息な策にも、従ってみるものですな」
部下に、童貫の“馬”を一斉射撃で狙わせた。
男は屈み込むと、懸命にもがき起きようとする童貫を容易く地面に押さえつけた。倒れた死馬の手綱を切り取り、それで童貫の手綱に絡んだ手首と、もう片方の手首をまとめて縛り上げる。
―――ほそい肢体を、片腕で宙へ引きずり上げた。
「う…っ」
「運に恵まれ成功したところで、どうせ一度限りの詐術。双頭山を壊滅させるところまでは到底行き着けぬでしょうし、全く面白味のない戦だと思っていましたが。……まさか、こんな戦利品を獲られるとはね!」
「ほう…、美……ッ」
完全に踵が地面から浮き上がり、手首を縛る手綱一本でほとんど全体重を支える形になっている。
童貫は痛みに眉を顰めながら、眼の前の男を睨みつけた。―――宋軍時代、畢勝らと同じくたびたび貌を合わせたことのある軍人だった。
「お久しぶりです」
悠々と、豊美は笑っている。
軍人としての力量は、恐らくは畢勝とも互角。友人とも云うべき彼ほど死に物狂いでの昇進を望まなかったため、地位としては未だ中程度の将軍に過ぎないが。
それでも、豊美は紛れもなき宋禁軍の将軍なのだった。
もともとは地方軍にいたが、たまたまその地方を訪れた童貫率いる部隊との関係から、禁軍に移り、将校から将軍へと出世を遂げた。しかし、それが今は宰相府(の名を借りた青蓮寺)の意向により、地方軍の二位将軍である董万の指揮下で双頭山攻略戦に参加させられていた。
それに特に反撥するでもなく、かといって、勇んで手柄を上げようとするでもなく。そこそこに任務だけ果たせればそれでいいと、全く白けきった内面を愛想嗤いの仮面で隠している。
―――そんな男が、今、心底笑っていた。
「貴方を持ち帰れるなら、俺も此処へ来た甲斐があったというもの」
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