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徒然種々
思いつくままに。

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黒狼と白狼、つづき。

 えと。今回は、「たんぽぽと未完成道化師のうた。」のSSA研究会さまのイメージをお借りして。
 黒狼と白狼のつづきを、UPさせていただきました!!
 
 
 

 
 休哥と同じく、童貫も実は“故郷”を持たない。
 彼は宦官だった養父の邸で育てられ、その後は軍で生きてきた。帰るべき出生の地などなかったが、しかし便宜上故郷ということになっている地方へ赴き、山へ入った。
 
 今さら政事に巻き込まれることのないよう、宋の主要な街からは遠く、一番近い村落からもある程度距離があって、しかし其処からは遠すぎない。多少足を伸ばせば、直に街へ行くことも難しくはない。
 そういう場所だった。人の集まりからの距離をそこそこに保った場所を選んだのは、あるいは同居する休哥の為だったのかもしれない。交替で里へ下りるとき、童貫は何時も休哥に薬を買ってくる。肺の病に効くという。
 怖ろしく不味いそれを、童貫の心遣いと思って、休哥は何時も素直に飲み下していた。……正直、あまり効く気はしていないが。
 
「…………」
 
 そんな風に、現役時代に貯めたたくわえをある程度無駄遣いも出来る。
 その程度に、彼らの棲む山は豊かだった。
 
 傾斜が険しく平面の少ない地形、冬の雪の多さ、鬱蒼と茂る木々……それらのせいか、人はあまりいない。しかし、棲んでみれば獲物が多く、山菜や木の実もたくさん摂れる。雑木林を切り開けば、肥えた土は素人農夫の手にも常にある程度の作物を届けてくれた。
 
 自己を極限まで追い込まずとも、生きてゆける。
 
 緑と水とたくさんの生命に恵まれたこの土地に―――休哥は最初、違和感を抱いていた。
 豊か過ぎると、感じていたのだ。心を緩め、和ませるものが多すぎる。一点の弛みもなく苛烈だった戦場と、格段の差だった。
 滋味に富んだ世界。―――最初、却って居心地が悪かった。命はここまで恵まれておらずとも、充分にいきてゆける。 
 
 
 しかし、その異質の世界に、休哥はいつの間にか馴染んだ。 
 
 
 この地で自然に呼吸をしている自分は、過去の自分とは既に違うものなのだろうと、休哥は思っている。
 時に、もっと過酷な、もっと厳しく生命に渇いた大地へ流離っていきたいという思いが耐えがたく湧き上がることもあった。しかし、その思いを静かに飲み下すことにも、どうやら慣れてきたようだ。
 
 自分はかわったと、休哥は思う。 
 もはや既に、“軍人”ではなくなっている。
 
 別に、だからどうだという訳ではないが……。
 
 
 
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