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徒然種々
思いつくままに。

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現パロ小話。

 まず、初めに。
 拍手を押してくださる方、本当にありがとうございますッ(平伏
 ぽち、と拍手をひと押ししていただく、そのひと押しに妄想のエネルギーをいただいております。……せっかくの励まし、結局妄想にしか使っていないのかと云えば、ええもう他に使用する能がございませんので、と。応えるしかないのですが!
 
 本当に、ありがとうございます!!
 
 えと、それで。
 もう一つ、妄想の燃料として何時も使用させていただいているのが、素敵な他サイト様の作品なのですが。その、素敵他サイト様の一つで、こちらのサイトからも最近リンクさせていただいた、saki 様の、「onion plus」というサイトにおきまして。
 
 北方水滸伝の、現代パロディが展開されているのです!
 学園ものなのですが。奨学金を得て名門・宋大附属高校に通う呉用センセを中心に、寮の同室の李富や、二学年上の部活の先輩・袁明、後輩で未だ中学生の晁蓋どのなどが、愉快に暮らしているという。
 
 その、現パロの設定で。
 呉用センセの、やっぱり二学年上の先輩に、童貫元帥がいらっしゃるのですよ、ね!
 
 和風美人さんで。
 寮では袁明と同室。高校卒業後は、普通なら寮を出るのですが、禁酒禁煙草禁異性及び門限有りの寮でも問題無しな童貫元帥、そのまま寮生活を送ってらして、剣道部の後輩だった畢勝どのと同室で暮らしてらっしゃいます。
 
 で、その童貫元帥。
 普段はそんなことないのに、夜更かしの後は寝起きが悪くて、畢勝どのにお世話されている、という設定になっておられまして。
 
 それで、その。
 そんな可愛い! 童貫元帥を、……書いてみたくなりまして。
 えと、最近リンクさせていただいたばかりなのですが、saki 様がお優しそうな方なのをいいことに、その、いけ図々しく、「ちょっと設定使わせていただけません?」と、お尋ねしてみましたところ。「別にかまいませんよ」と意思表示を、して下さいまして。
 
 で、遠慮の欠片も見せず、管理人、さっそく設定、使わせていただいてしまいました! もう面の皮厚いです!
 
 その結果、出来ましたのが下の現パロ小話です。
 
 
 …………、それで?
 
 
 という感じの、小話なのですが。
 とりあえず、今更殊勝ぶって、ブログの方にUPさせていただきました!
 saki 様、ありがとうございました!!
 

 んー、と。
 甘く、くぐもった吐息。
 
 ピピ、と枕元で鳴る目覚ましへ向かって、夜具から白い手が伸びる。
 剣術の竹刀胼胝と、筆胼胝。無骨に鍛えられていておかしくない手なのに、それでも生来の造りの良さをくっきりと残す、しなやかで華奢な腕。
 
 ほそい、骨の浮いた手頸がうんと伸びて、ベルを止めて。
 ぱた、とそのままベッドに落ちる。
 
「………ぅ、ん…」
 
 むずかるような、眠気を含んで酷く甘やかなこえ。
 ほとんど声変わりも無かったそうで、少々高めの、澄んだ声音……嫌って抑え気味の日頃と異なり、生のままの響きだった。
 
「起きられますか?」
 
 畢勝は、声をかけた。
 ベッドの中で白いシーツがもぞもぞと動いているが、なかなか返事は返ってこない。
 
「…………」
 
 答えを待たず、彼は湯を沸かし始めた。
 宋大附属の寮は設備がいいので、個々の部屋にも淹れたてのコーヒーを楽しめる程度の器具は揃っているのだ。
 
 
 昨日の晩は大学に出すレポートがあるとかで、童貫は眠るのが遅かった。
 同室の畢勝に詫びて、彼がベッドに入った後も、消灯を迎えた寮の薄暗い静けさのなか、手燭の灯でノートパソコンに向かい合っていたようだ。
 静かに、淡々とキーを叩く指の音を快い子守唄のように聞きながら、畢勝は眼を閉じたのだ。深更を過ぎて……三時か、四時くらいだろうか? 彼が何となく眼を覚ましたとき、机の方からまだ柔らかな明かりと幽かなキーの音が洩れていたから、童貫がベッドに入ったのは実質明け方になってからなのかもしれない。
 
 童貫が大学に入ってから、時おり同じことが起きていた。
 
 別に試験やレポート提出の一時期のみの現象ではなく、そもそも童貫は締め切り間際に仕事を焦る性格でもないから、恐らく教授に気に入られて研究の手伝いもしているとかいう、その手伝いに関するレポートだったのだろう。 
 
 何時もなら、目覚ましをかけるまでもない。
 夜が白み、星の輝きも薄れて辺りの空気が淡く菫色に染まり始めるころ、自力で起きてきっちりと身じまいをする。
 童貫なのだが、こうして恐らくは大学の手伝いで夜更かしした後など、どうしても時間通りに起きられないようだ。
 
 目覚ましをセットして、どうにか眼を醒まして。
 それでもなかなか起き切れずに、ぐずぐずと物憂げな態度でいる。―――何時も厳しいほど端正な姿勢を崩さない童貫を知るだけに、初めてそんな朝を迎えたとき、今年から彼と同じ部屋に滑り込んだ畢勝は随分と驚かされた。何か病気ではないかと、心配したほどだ。
 
 気だるく、ほつれた髪もそのままに。
 もがくように起き上がり、眠たがる肢体を引きずって洗面台へ。冷たい水で貌を叩いてから、前もって淹れておいた毒のように濃いコーヒーをどぼどぼとマグカップに移し変えて。普段は注ぐミルクすら省いて、真っ黒なそれを薬代わりにすする。
 
 飲み終えて、やっと少しだけ眼が醒める。
 そんな調子なのだ。
 
 
 今日も、放っておけばそうなるだろう。
 しかし、朝の目覚めたてに究極のブラックコーヒーなど、胃に悪い。おまけに、昨夜淹れて香りも何もすっ飛んだような代物など!
 
 童貫に飲ませる訳にはいかないと、畢勝は手早く湯を沸かし、コーヒーを淹れ直した。ミルクも少し温めて、一緒にマグカップに注ぐ。渦を巻きながら、とろりとした、香ばしいチョコレート色に変じていく人肌の液体。
 
 どうにかベッドから這い出して、眠たげに眼を擦っている。
 童貫の手を引いて、彼が何とか貌を洗い終えるのを待ってタオルを渡し、更に窓際へ連れて行って椅子に座らせる。そして、マグカップの柄を握らせた。
 
 ちいさなくちが、陶器の肌に触れるのを見ていた。
 熱くないですね? と尋ねると、半ば夢うつつの風情で頷きが返る。真っ白いほそい喉を、畢勝の淹れた液体がぬるい温度でするすると通っていく。
 
 花びらのような薄い瞼が、半眼に開いて。
 窓から射し始めた朝の光に、蒼く静脈を浮かせている。
 
 
 ―――着替えは、後で。
 
 
「先に、髪をしますね」
「…………」
 
 空いたマグカップをシンクへ運んでおいて、畢勝は櫛を手に取った。
 椅子にぼうっと座り込んだ童貫の背後に立ち、肉づきの薄い、ほそい肩に手を置き少し背を起こさせて。それから目覚めたときのまま放りっぱなし、縺れて絡んだ髪を梳り始める。
 
「痛かったから、おっしゃって下さい」
「…………」
「大丈夫ですか?」
「…………」
 
 梳かれるたび、まっすぐに流れ落ちていく黒髪の狭間から、雪のように透った白い地肌が覗いている。
 ごく小さな頭部は畢勝の掌に程良く収まって、触れると、頭蓋の造形の良さが髪と互いの皮膚を通してくっきりと伝わってくるようだった。顎からの輪郭線もシャープで、卵型の頭部というのはこういうことを言うのだな、とこんな朝が来るたび、畢勝は繰り返し実感してしまう。
 
 少しずつ、透明なジェルを絡ませながら髪に櫛を通していく。
 
 梳けばすぐに櫛目の通る綺麗な髪で、童貫自身はあまり手入れもしていないようだが、触れていられるのが嬉しくて、畢勝は何時もうんと丁寧にやる。
 ほんの少し、奥底に淡く淡く蒼(ブルー)を溶かし込んだようなジェルも、畢勝が勝手に探して買ってきたものだ。分厚い曇り硝子の壜を開けて手にすくうと、ほんの一瞬、ひんやりと静かにミントが香る。そんなところも、実は気に入っていた。童貫に相応しいと思う。
 
 きつい香りではなくて、外気に晒すとすぐに消えてしまう。
 
 だから童貫も、あまり気にしていないようだ。日頃自分で使うことはないようだが、畢勝が勝手に使用する分には別に止めろとも言わない。―――寝起きで、何処までも仄かな整髪料の香りになど気付いていないのかもしれないが。
 
「…………」
 
 じっくりと頭部を辿る畢勝の指を感じながら、童貫は心地良さそうに眼を瞑っている。血流を良くして眠気を晴らす、マッサージの意味も少しあった。
 額の色が薄っすらと蒼褪めているのは、まだ完全には眼が醒め切っていないせいなのだろう。夜更かしの後、童貫は日頃の規律正しさが嘘のように目覚めが悪い。恐らく、もともとが低血圧。
 
 今のうち、とばかり畢勝は今度はクリームを手に取った。
 肌の手入れに使うものだ。指先にとって、童貫の額から頬、鼻梁……形良く整った造作に合わせて、薄く丹念に擦り込んでいく。
 
 水の表面を撫でるような、すべらかで肌理こまやかな感触。
 幽かなざらつきも小さな疵もまるでなくて、本当に自分と同じ人間だろうかと吐息が零れてしまう。
 
 真白な皮膚。  
 初めて見たとき、漆黒の髪を綺麗に切り揃えたこの人を、まるで京都の古い町並みで陳列されている、日本人形のようだと思ってしまった。
 肌理粗く血管を透かす白人のそれとは違う、胡粉を塗り込めたような奥行きをもつ、上品な肌の白さ。そのくせ、淡い透明感が漂うのが不思議だった。
 
 一本一本がまっすぐな、睫毛。
 歪みのない純粋な斜めの直線が、ほとんど作り物めいて美しい。
 
 奇蹟のように綺麗だ、とつくづく思う。
 もちろん、童貫の本当の美しさは外見にあるのではなくて、その精神にあるのだけれど……外見だって、信じられないくらい美しいのだ。珠玉(ほうせき)みたいだ。
 
 その環境から色々と苦労を積んできた童貫が、自分の外見を決して好いていない……というより、むしろはっきりと嫌っていると、知っているけれど。 
 それでも。
 
「…………」
 
 ―――普段は、じろじろと容貌を眺める無礼など犯せないので、こんな風にじっくり美しいものを見て、触れて楽しめる時間が、畢勝は密かにとてもとても幸せだった。
 
「何時も、すまぬな…」
  
 髪と肌の手入れを終えて。
 畢勝が残り惜しく至福のときを味わう頃になって、ようやく童貫が多少はまともな言葉を話し始める。
 
「いえ」
 
 それに対して、畢勝は何時も少し決まり悪げに笑う。
 それから白いシャツを出して、改めて彼の着替えを手伝うのだった。
 
 
 
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