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連載しております女版童貫様の、話のつづきです!
扈三娘が少し……いえ、だいぶ?……いやな女、かもしれません(汗
磨き抜かれた珠玉(宝石)の如く白く、冷たいほどに透明感を湛えた肌だから、白粉などほとんど必要ない。しかし、紅は薄くくちに刷く。
特に贅沢な支度などはしないが、しかし、自分の手で小まめに野草を摘み、糠を蓄え、膏や茶の残り滓まで按配して、童貫は日々髪や肌の手入れを怠らない。当たり前のように、指先まできちんと気を使って綺麗に整えている。
その丹精は、女衣裳を脱いで戦場に立ったときでさえ、童貫の姿態の端々に“女らしさ”を滲み出させていた。
―――今も、晁蓋の隣で。
馬上から、何処かの姫か令嬢の如く晁蓋に抱え下ろされている。
童貫を見ながら、
「………」
扈三娘は、もやもやと喉許にまで込み上げてくる不快感を必死に堪えていた。
戦場に出ながら、女を捨てきれないなどと…、と。
ちら、と考えてしまう。
「……?」
考えてから、ふとその思考の不可思議に気づいて彼女は首を傾げた。
―――女を捨てるだなどと、扈三娘だって考えたことはない。いつも、女は女だと思い、その上で男に負けたくないと思っている。それだけなのだ。
しかし、あくまで“女らしく”振る舞い、梁山泊頭領のひとりである晁蓋にしなだれかかる童貫を見ていると、何故か彼女の胸には非難の念と苛立ちが募ってくる。
―――単に姿形のことだけではないのだ。
大皿の料理を取り分けたり、投げ出された上着を整えたり天幕のうちを簡単に整理したり。所謂、“女のする”ような仕事―――扈三娘が意図して避けている仕事を、童貫はその軍人らしからぬ細い手を伸ばし、当たり前のようにこなしてしまう。
彼女のそんな姿は、扈三娘の眼には男に対して酷く媚びたものに映った。
幼少の頃より後宮という淫らな場所で生活してきたという、それが女の性質(さが)なのだろうか。
まあ、後宮育ちだけに料理など所謂家事全般がこなせる訳ではないようだし、どちらかというと無口な性質らしく、場の話を弾ませるという“花”の役割も果たせていないようだが……それにしても、やはり男というものは、扈三娘(自分)のような女らしからぬ女ではなく、童貫のような女めかした女を可愛いと思うのかもしれない。
―――いや、もちろん軍人として生きる道を選んだ扈三娘にとって、“男の眼に女としてどう映るか”などということはどうでもいいことではあるのだが……。
「………」
もう一度、童貫を眺める。
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