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紗麻様より借用。
その設定で、小話の続きを……。
「楊家では、良くしてもらっているのだろう?」
休哥の問いに、
「…………」
躊躇なく頷く子供。
「…………」
まぁそうだろうな、と休哥も思う。
友人兼同僚として延平のことは良く知っているし、その父親である楊業のことも、道場に時々貌を出している関係から、ある程度人物を把握している。彼らの暮らす家なら、血のつながりのない養子(四郎)であっても、殊更他の子との扱いに差をつけられたり、邪険にされたりすることもないだろう。
―――しかし、それなら今さら俺如きに何の用だ?
疑問だったが、せっかく訪ねて来た小さな子に向かって「何の用だ」と性急に問い詰めるのも、どうも大人気ない気がした。
「…………」
大人用の大きな椅子にちんまりと坐った小さな子供を、休哥はやや困惑しつつ見つめる。その容貌は、見ようによっては冷やかとも映る無表情で覆われているのだが。
「…………」
昔から、休哥は幼い子どもにあまり縁がない。―――だいたい、子供や小動物には怯えられる方なのである。
組んでいる延平が非常に人当たりよろしく、子供にも好かれるタイプなので、それで仕事上も問題になったことがない。だからこれまで、それを全く気にしたこともなかった。
「…!」
ふと気付いて、休哥は造り付けの棚を振り返った。
そこには、貰い物の大福モチが置いてある。近所の店の品なのだが、なかなか味がよろしいと評判である。
「食べるか?」
薄い経木の上に載った、白いモチ。
摘み上げて、子供の手に渡した。
「子供は、甘い物が好きなのだろう?」
「…………」
子供は、休哥を黙って見上げる。
それから、ぺこ、と頭を下げた。いい子である。―――しかし、そのままモチにくちをつけようともしない。黙って、手に持っている。
「…………」
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