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お絵描きバトンなるものを、「カセキモリ」の古都様から廻していただきました。童貫元帥にテーマは黒スーツ
と、大変萌える内容で廻していただいたのですが。
何時も色々と、ありがとうございます!でも残念ながら、私はお絵描きってできない、のですよね。仮に試しに描いてみたとして、PC内にUPするやり方自体、全く知りませんし。
それで、結局いただいたバトンの方は受領不可能ということにしてしまうしかないのですが。
せっかく……せっかく萌えるテーマをいただきましたので。
一応、童貫元帥が黒スーツを着ている姿を、言葉で描写してみました。も、ひたすらただそれだけの話なのですが。
よし見てやろうという優しい方がいらっしゃれば、
どうかこちらから……
薄くしなやかな、上質のシルクで仕立ててある。
色は喪服とさえ間違えられかねない、真正の黒。しかし絹地特有の光沢と、つやっぽく滑(すべ)らかな質感が単なる陰鬱に印象が落ちるのを救っていた。時おりスーツの袖口から覗く真白なシャツの、カフリンクスの柘榴石が目の醒めるほど鮮やかに緋(あか)い。
フルオーダーの、一揃いだった。
近来名高い、初老の仕立て屋が一度は独立させた弟子の侯健にも助手に入らせ、全力を以って仕上げていた。
……スーツを着る本人、童貫は着道楽とは正反対の嗜好の持ち主である。昼間のビジネスには向かない、こうした夜会専用のスーツをわざわざ仕立させる洒落っ気は持ち合わせていなかった。
会社側から褒賞の名目でテーラーに注文を出し、命じられれば従う律儀さで、童貫は膨大な仕事の合間を縫って採寸、仮縫いに付き合った。その挙句に仕上がった一着である。
身頃や肩幅は思い切って詰められており、腰周りも細い。
上着の丈もかなり短めだったが、童貫の腰の位置が高いので粋にはならず、上品に落ち着いている。―――というより、許されるぎりぎりのラインで見切った美事な裁断が、下手をすればカジュアルになりかねない素材、デザインをフォーマルの範囲でしっかりとまとめていた。
童貫は男としてはかなり小柄な方だが、身体のバランスそのものは悪くない。すらりと痩せた肢体は程良く引き締まり、如何にも俊敏そうな、きびきびとした印象があった。
その細身の体の表面を、水のようになめらかな黒シルクが流れていく。
―――清澈な、透明感が際立っていた。
どちらかというと、静けさの奥にある苛烈が過ぎて、硬質で冷ややかな印象の強い日ごろの童貫だった。なまめかしく浮ついた雰囲気を出さずにその圭角を抑え、水晶の澄明さのみを引き出しているのは仕立て屋の腕だろう。
「…………」
発泡性の白ワインに、静かにくちをつける。
半ば伏せられた真っ直ぐな睫毛が端麗な容貌に淡い翳りを落とし、フルートグラスを軽く呷る瞬間、やや仰け反る頸すじはすんなりと細い。スーツの黒と映えあって、透きとおるような白さだった。
―――童貫に向け、会場のそこここから注がれる視線の熱さ執拗さは、決してささやかなものではなかった。
しかし、大企業の重役として、童貫はあらゆる意味での注目に慣れている。
狼狽えるでもなく、絡みつく視線の糸を自然に無視して、普段通りの態度を何処までも押し通した。
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