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紗麻様からお借りした設定を使っての話、です。
追加しました!
「…………」
子供は、モチを食べない。
「…………」
むしろ何やら困った顔つきの子供に、休哥は心中僅かに首を傾げる。
嫌いなのだろうか、と思う。
「「………」」
モチを片手に、困惑貌で椅子に坐っている子供と。
その子を見つめながら、無表情に立ち尽くす休哥。
「「………」」
二人は暫し、沈黙のときを過ごしたが、
「………?」
ふと、休哥は気づいた。
子供の大きな黒い瞳は、何も載せていない、空っぽの経木を見つめている。子供にやったモチは、最後の一個だった。―――休哥の分は、無い。
「……半分にするか?」
思いついて問うてみれば、
「…っ」
子供はハッとした様子で目を見開いた。
それから、こくん、と頷く。少し、勢い強く。
「そうか」
休哥も頷いた。
いったん、モチを受け取る。
何の変哲もない、大福モチ。
両端を摘んで引っ張ると、みょん、といい具合に伸びていく。上質の糯米を使い、昔ながらの製法で丁寧に作ってあるので、作りたてはとても柔らかいのだ。
「…………」
伸びるだけ伸びたモチを更に引っ張り、何とか千切る。
するとちょうど半分の大きさになっていた。大小が出来れば、大きい方をやろうと思っていたのだが。
仕方が無いので、休哥は半分になったモチの片方を、適当に子供の手へ戻してやった。
残った半分に、かぶりつく。
「…………」
しっとりとした餡の甘みが、休哥のくち一杯に広がった。
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