徒然種々
思いつくままに。
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「たんぽぽと未完成道化師のうた。」のSSA研究会様からお借りした、イメージで。
書かせていただいております話の、続きです!
書かせていただいております話の、続きです!
片腕が、無い。
だから、今の休哥はひとつの作業―――肌を滴る雫を拭うなど―――をするためには、他の作業を止めて片方しかない手を空けなくてはならなかった。
不便である。
しかし、自分が変わったと休哥が考えるのは、片腕が無くなったとか、そんな身体的な理由からではない。
軍人として生きる以外考えられなかったはずの自分が、今はもう“軍人”ではないと、彼には感じられるのだった。
あのとき。
宋禁軍軍人として、楊令率いる梁山泊と戦った最後の戦で、休哥は片腕を失った。
敵の将である史進が、部下さえも振り捨て、一騎突出して童貫の騎馬隊を蹴散らしていく。
そのせいで、童貫と楊令は互いに軍勢から剥き出し向かい合う体勢に、なろうとしていた。
彼ら二人の間に、休哥は強引に割り入った。
一騎討ちとなれば、残念ながら童貫は楊令の敵ではない。もともと個の武人としての腕が楊令とでは格段に差があることに加え、男盛りの年齢と向かい合うに童貫は、少々歳を重ね過ぎていた。
だから休哥は、彼らの狭間に無理矢理に躰をねじ入れた。
結果、腕一本斬りおとされたのだ。
『……っ』
ぎりぎりの距離に居て、馬を無理に疾駆させ、それでようやく間に合った。
だから、万全の姿勢を取ることが出来なかった。―――それでも、戦の総帥であり恩人でもある男を背後に庇って、どうにか斬り込んでくる剣を受け止め払い除ける形になるはずだった。
しかし、瞬時、何かが脳裏で閃いた。
保たない―――この剣では楊令の剣……楊家の吹毛剣を支えきれぬと、折れ砕ける剣の像(イメージ)まで伴って、“声”ならぬ“声”が休哥の脳裏を奔り抜ける。
咄嗟に、仕込みの短剣を抜いていた。
『………ッ!!』
斬り込んでくる、楊令。
その剣を受けた休哥の剣が、砕ける。―――振り下ろされる、刃。
その切っ先を、
『ぐ…ッ!』
休哥は、体で受け止めた。
背後の童貫には、掠り傷ひとつ負わせない。
鮮やかに紅く、鮮血が条となって噴き上げた。
切れ味鋭い吹毛剣。
かつての戦では梁山泊の頭領たる宋江の血も吸ったという剣は、紙の如く鎧を割り、休哥の皮肉を裂いて深く骨を噛む。
―――鋼の冷気が、一瞬で焔に変わる。
『……っ』
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