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何だか、色々書きたくてならない感じです。
―――という訳(?)で、昨日の続きです。
Rです。
「……あ…っ」
徐々に激しさを増していく行為に、童貫は小さく魘されるような声を洩らす。
くちを噛みしめ、懸命に声を殺しすがるように褥に爪を立てて身体を鎮めようとするが、びくびくと四肢が慄える。背筋が引き攣れ、頤が反り返った。
贅肉のない、筋骨の張った男の逞しい体躯が決して乱暴にではなく、しかし有無を云わせぬ力を以って、震えて拡がる左右の脚の狭間から躰の芯にまで割り込んでくる。
「あ、ぁ……っ、」
―――瞼の裏には、あの日の光景が浮かんでいた。
行為が佳境に差し掛かればいつも、絶えることなくあの“明け方”が呪いのように童貫を捕捉する。
陰鬱な、薄暗い黒灰色の曇り空。
重苦しく、分厚くどんよりと雲が淀んでいる。その下に鬱々と、濁った赤を流した昏い朝焼け……
錆朱の、血。
「…ッ!」
―――頂点に、達して。
熱く濃い、液体がどっと体内へと放たれ、収まりきれずに滲み出す。未だ熱を残したものが抜き取られれば、溢れ流れて褥を汚した。
無駄に消滅していく、無数の命の欠片―――
「………」
童貫は、ただ眼を瞑っていた。
「………」
灼けつくように熱かった箇所が、ひややかに冷め果てる。
粘り気の強い、濃厚な液体を、男の大きな掌がそっと布を宛がい、拭い取っていく。―――後は、さらさらと紅いだろう血が零れて、同じ男の手で手当てされた。
汗になった肌も清められ、半ば意識朦朧としてぐったり気だるく横たわる肢体に、脱がされた夜着が改めてきちんと着せかけられる。
「………」
そして男は、目隠しを外して、黙って出て行く。
最後に、労わる手つきで童貫の髪に触れて。
……彼らは。
よごと夜毎に寝所を訪い童貫を抱いていきながらも、決してくちづけだけはしない。
此処は貴方が選んでくださったときに、と囁いて、童貫の唇にそっと指先を当てる。激情を必死に堪えて、幽かに慄き震える指先を。
「………」
どうすれば、いいのか。
童貫には分からない。
「………」
―――このままではいけないと、それだけは明らかなのに。
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