[327] [326] [325] [323] [322] [320] [319] [317] [316] [315] [314]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
それを基に、後宮百合話を書いてみたのですが。―――作成時間、合わせて1~2時間相当。文章を推敲しないのは何時ものことながら、今回は更にアイデア自体熟していない感じで。
ひたすら、設定の羅列……という感じなのですが(苦笑。
一応、以下にUPしてみます。
後々、手直しするかもしれません!
………今回改めて実感したのは、やっぱり童貫元帥の女人姿って、自分、イメージできていないな、ということ。
先に一度、女体化で現パロもどきをやっていますが、それは他のサイト様の設定をそのままお借りしただけですし。自分で一度書きかけていたものは、どしてもまとまらないのでそのままになっていますし。
この数ヶ月、姉妹のように馴染んでいた。
女が、すがりつくような貌をして振り返った。
「…………」
行くといい、と童貫は黙って眼で促した。
童貫の手引きがあったとはいえ、あの晁蓋という青年、奪われた女を取り戻すため、この国で最も警固の堅い後宮にまで忍び込んできているのだ。
それだけ求められて、また女の方も晁蓋を求めている。
ならば、行けばいいのだ。だいたい、元は叛徒の一員であったというこの呉用という女、後宮は似合わない。
行け、と。
そう思えばこそ、わざわざ叛徒を手引きした。
「…っ」
―――最初は人形のように意思を失い、項垂れ、しかしやがて泣くことを思い出し、心細さに震え、そのうち傍に居る童貫を姉のように慕い始めた。
妹のような女が、駆けていく。
その身を、迎えに来た青年がしっかりと抱きとる。
「…………」
見届けて、童貫はそのまま引き返そうとした。
しかし、
「あんたも」
女を抱いた青年がこちらへと手を伸ばすのに、眼を瞠った。
このとんでもない夜において、童貫はここで初めて驚きを感じていた。その瞬きに、目元から斜めの直線を描いて伸びた睫毛が揺れる。
「あんたも、来いよ」
青年が呼びかける。
その不可思議と思える台詞に、
「…………」
童貫は頸を傾げた。
すぐに否を返す。私には行く理由などないと。
「―――そうか、分かった」
当たり前のことを言って、青年と女はようやく闇の中へと溶けていく。
童貫はもう一度、今度は反対側に頸を傾げて、それからひっそりと自室へと戻った。
―――ここ最近の、帝の寵愛一番だった女が逃げた。
逃がせるのは、後宮内で唯一、後宮の外での仕事も任され、後宮からの自由な出入りを許されている童貫だけ。
起こした行動がばれずに済むはずもなく、すぐに処罰が下される。
帝の“財産”を損なったのだ。
当然のこととして、童貫は自分の知る二人目の男―――ひとり目は、先帝―――による仕置きを受け容れた。
至近から力任せに振られた杖に横貌を打たれ、床に叩きつけられる。
肩や背、腰へと乱打が加えられた後、童貫は着物を肌蹴られて、肌身をむき出しに外気へ晒し、脚を左右に開かされた形で牀へと括りつけられた。
「……っ」
帝の眼の前で、数人の宦官の手で道具を使って辱められる。
数刻に渡って、淫靡な折檻は延々と続けられた。
―――複数の、蛞蝓の這い跡のように白く粘る視線が時に反り返り、仰け反る童貫の裸身を執拗に舐めまわす。
事が済んだ後も、童貫はすぐには起き上がれなかった。
ようやく起きたときには、既に日が西方へと傾きかけていた。
「…………」
下腹部に残る鈍痛と重苦しい違和感を堪えつつ牀から脚を下ろすと、太腿をつうっと紅い血の滴るのを感じる。乱暴な行為で、中が傷ついていた。
腰が気だるく、皮膚を生ぬるい汗が濡らす。
項に絡みつく後れた髪をかき上げながら、童貫は立ち上がった。
自身の汗のみならず、宦官たちの残した体液――唾液など――が気味悪く、冷たい水で肌を清めたかったが、そんな時間はない。後宮の外での今日の仕事が、丸ごと残っていた。
「…………」
童貫は吐息をひとつ吐くと、最低限の身づくろいだけして室を出た。
帝から杖によって受けた打擲の痕は全身で痣になっている。特に一番最初、打ち叩かれた頬は赤黒く血が溜まり腫れ上がっていた。
化粧で隠せるものでもなく、童貫は薄い被衣をかぶることでひと目を誤魔化すことにした。しかし、もちろん見るつもりで見れば、長時間にわたった仕置きの跡などたやすく見て取れる。
案の定、
「無様なものだな!」
後宮の出入り口で待ちかまえるように立っていた男が、出てきた童貫を見て鼻で哂った。
高球―――彼は、あからさまに嘲り嬲る眼をして童貫に近づいてくる。
「おい」
「―――何用だ」
「お前の行く先が決まったぞ」
俺のところだと、高球は胸を反らした。
「この度の戦勝の褒美として、本来はお前、あの畢勝とかいう軍人に下賜される手はずだったのだがな。今回の騒動でお前は罪人になった」
「……………」
「褒賞として扱われる資格などなくなった訳だ。それどころか、本来なら帝の御物を損なった罪で打ち首になるべきなのだが、それも憐れ。―――行き場の無い身を、俺が引き取ってやることになったのだ」
嬉しいかと、高球は口先で弄う。―――眼に、そんな筈はあるまいと、童貫の失望と苦痛を期待する卑しい光を湛えながら。
しかし、
「…………」
童貫は決して強がりではなく、安堵していた。ふっと肩の力が抜ける。
あの畢勝という軍人を厭う訳ではなく、高球を好む訳でもなく、だがしかしそれ故に、童貫は己が畢勝の元へ下賜されることを避けたいと思っていたのだ。
「―――何だ?」
そんな童貫の心中を、気配から察したのだろう。
高球は眉を顰めた。
「お前、何を喜んでいる?」
「…………」
「―――強がりなら、止めておくことだな。どのみちもうすぐ俺のところへ下げ渡されるのだ、お前は。俺の寝所で、たっぷりと本音を吐くことになる」
「……本心を偽るつもりなど、無い」
そんな必要など無いと、童貫はむしろ薄く笑った。
「私が褒美では、あの畢勝とやら、折角優秀な軍人であるというのに気の毒というもの」
「あん?」
「―――私は、子を孕むことが出来ぬからな」
「………なに?」
あっさりと述べられた言葉に、高球は眉を寄せる。
この宮廷や後宮の裏事情に詳しい男にして、さすがに初耳だったらしい。疑わしげな眼になった。
「……どういうことだ?」
「どういうも何も……私は妊娠能力を持たぬ女なのだと、言っている」
事実だった。
今の帝が皇子であり、先帝が未だ位にあった時代のことだ。
童貫は権門の養女として後宮に上げられた。
そして初潮を迎えた直後、待ちかねたように帝の手が付けられた。―――どんな形であるにせよ、気に入られたということなのだろう。
しかしその後すぐに、童貫は女性としての身体機能を損なう薬湯を飲まされたのだ。
出産という大事業で命を落とす女は多い。
また子を産んだ後、抱いて愉しむための女体としては味を失ったという女も少なからぬ。
そんな不測の事態を避けるため、時の帝はしかるべき処置を施して、童貫から妊娠の能力を奪い取った。
その結果、皇子を産む可能性の無くなった童貫は養家の後ろ盾をも失い、後宮の女や宦官たちから通常以上に陰湿な虐めを受けながら生きてきた。唯一与えられるのは、帝から注ぎ込まれる、ほとんど妄執とも言うべき変質的な情欲のみ。
―――それに傷ついて泣き暮らす弱さは童貫にはなく、孤絶した立場ながらも超然と日々を送っていたわけだが……。
先帝が亡くなった後も、本来は一掃されるべき後宮に童貫は一人残された。
決して“母”となりえぬ身だから、“子”の立場に当たる次帝と交わっても何ら問題ではないと。
「だからこそ、私はこうして後宮の外を気軽に出歩ける」
「は? それは―――」
眼を丸く見開いたままただただ疑問を発する高球に、童貫は苦笑した。
くッ、と僅かに喉を鳴らす。
「特別の寵愛故だとでも思っていたか?」
「む…」
「私ならば誰と密通しようと、誰に暴行されようと、その相手の種を孕むことなどありえぬ。だから、後宮から出てもかまわない」
後宮に、帝という“唯一の男”以外の血が入ることは絶対にない。
「それだけのことだ」
「……………」
「―――残念だったな? 高球」
「あぁ?」
「お前が私の下賜を望んだのは、私が帝のお気に入りとして長年寵愛を受けていたと思っていたからだろう? その寵愛ゆえの高い自尊心を持った女が、後宮を追われ、お前の閨に侍ることを愉悦と捉えていたはず」
しかし残念ながら、そんな“寵愛の女”など最初からいなかったという訳だと、童貫はひっそり嗤う。
「………」
高球は眉を顰めた。
己の思惑が―――この誇り高く頭の良い女を己が奴隷として足下に引き据え、閨で思う様嬲って啼かせてやりたいという歪んだ欲望を見透かされているのは、既に知っていた。だから当然、童貫は高球へと下賜されることを望まぬだろうと思っていた。
童貫自身が何と言おうが、童貫はやはり己なりの誇りを持った女である。また高球を厭うている……というか、保身の能力とどす黒い欲望ばかりで脹れあがった佞人と醒めた視線で見ていることも確かだ。
逆に、優秀な軍人である畢勝には好感を抱いている。だから、当然童貫は畢勝の元に行きたがるだろうと高球は思っていたのだが……。
しかし童貫は、高球の元へ下げ渡される方が望ましいという。
―――童貫にしてみれば、その思いこそがこれまで時おり、接する機会のあった一人の軍人に対し、何時か自然と育まれた好意の表れなのだが。
不審がる高球に対して、
「あの男は……」
童貫は躊躇いもなく、その思考の経緯を声に乗せた。
あの、畢勝という軍人。
彼は、帝から後宮の女を下賜されることを望んで、ひたすら軍務に邁進してきたのだという。
嘘か真か、娶った妻は名家の娘ながら情人持ちで有名で、周囲から縁組を忌避されており、畢勝はそれをあくまで出世の具と割り切って、その貧しい情人ごと引き取ったのだとまで噂されているのだ。
そこまで“後宮の女”を憧憬し、下賜を望んでいた。
そんな男に、この身が下げ渡されるのでは気の毒だ。
童貫はそう思う。
こんな使い古しの、草臥れた石女(うまずめ)ではなく、もっと健康でもっと若い娘が宛がわれればいいのだ。
後宮から気軽に外に出られるのは些か特殊な立場にある童貫だけで、だから畢勝が直接に知る後宮の女は童貫だけだが、しかし奥に入れば美しい娘が幾らでも溢れている。
「帝から下賜された女ということになれば、今の正妻はいったん側妻に退いて、その新しい女が正妻に直ることになる」
今の妻は情人に夢中で、夫である畢勝には経済的支援以外のものを望んでおらず、畢勝もまた妻に興味が無い。それなら、畢勝は新しい正妻に子を産んでもらわねばならないのだ。
だから、畢勝にとって下賜されるのが童貫であるのは、非常に好ましからぬことであるはず。
長年思い焦がれた“後宮の女”をようやく手に出来るのだから、どうせなら童貫などではなく、妻に相応しい良い娘が当たればよい。
「好感を抱くゆえ、あの男の下へ行くのを私は好まぬ。その点、お前相手なら全く問題は無い」
童貫はあっさり断言してのける。
高球は既に正式の妻子は愚か、情人や庶子も山ほど抱えている。
だいたい、高球は畢勝とは違い、“後宮の女”などに夢を抱いていない。童貫へと注がれる視線にも、いかにも卑しく好色な、“性の玩具”の扱いを夢想して欲情する光が明瞭に滲んでいた。歴代の、帝たちと同じ。
―――飽きるまでは使用される使い捨ての道具である自分に、童貫は今さら疑問など抱かない。
「とかくの“賜わり物”が、期待外れの代物だったのはお前にとっては無念というものだろうがな。しかし、それは私の知ったことでは―――」
無い―――と言いかけて、ふと童貫は言葉を切った。
「………」
自分を見つめる高球の視線。
最初、明らかにいたぶるようだったそれが、今は何か……ちらと、童貫の不快を覚える色をしていた。彼と接して初めてのことだった。
「……何だ?」
「………いや」
高球は軽く頸を左右に振った。
その何ともいえない不思議な眼をしたまま、彼は腕を伸ばした。贅肉の分厚くついた掌で、結い上げて簡素な飾りをつけた童貫の髪をぐしゃりと撫ぜる。
無造作な扱いに、花の茎のように細い、白く華奢な頸が小さく揺れた。しかし、傷めつけるほどの揺らし方はせずに、掌はすぐに離れた。
「高球?」
「……もうすぐ、俺はお前の主になる」
言葉遣いをいかに改めるべきか、今からちゃんと考えておけよ、と。
それだけ捨て台詞のように言い放って、高球はあっさり去っていった。
「…………」
童貫は、小首を傾げた。
己と異なる価値観を持つ童貫に対して、彼が何時も発していた軽蔑というか、嫉視というか……そういうものが、不思議と今の高球からは感じられなかった。何かもっと違う感情が、そこにあったようだ。
「…………」
何なのだ、と童貫は頸を左に傾げた。
それから、不意にそくそくと身に迫る寒さに気付き、着物の上衣の前をきつく合わせた。少し、熱が出ているのかもしれない。
―――日暮れが、近づいていた。
その晩、夜の更けた頃。
やはり疲労のゆえか、それとも仕置きによってつけられた体内の傷のせいか、少し発熱していた童貫は、食事も摂らず早々に寝所へ入っていた。
うとうととまどろんでいたが、
「…?」
外に、人の気配を感じて眼を覚ました。
明るく意気のいい、輝くような気配の持ち主。
「…………」
まさかと思いながら起き上がり、靴を足先にひっかけ夜着の上に革衣をかぶりながら外へ出ると、
「おい、来たぞ」
案の定、昨夜見た青年が其処に居た。
「やっぱり、宮廷の奴等は仕事が遅いな! もしかしたらもう道が塞がれているかもしれんと思ったが、まだ大丈夫だった」
「………明日か明後日、少なくとも月の替わる前には新しい警備体制が組まれるはずだが…」
その暢気な手配を敢えて急かすこともしなかった童貫は、呆れたような眼で再度後宮を訪れた青年を見ていた。
青年の昨夜の侵入は、後宮に囚われた呉用という愛しい者を救い出すため。童貫が気付いて手助けしてやらねば到底成功しなかっただろう無謀な行いは、しかし譲れない動機があってのことだった。
だからこそ、童貫は青年―――晁蓋が、二度と同じことをしないだろうと思っていた。もはや、後宮に彼の想い人はいないのだから。
ゆえに、警備の強化を急がせることもなかったのだ。
「いったい、何をしに来たのだ?」
「あんたを、連れ出しに来た」
「―――昨夜も言っただろう。あれと私とは違う。私には、此処を出て行く理由などない」
泣き暮らしていた呉用とは違い、童貫にとって、この後宮での生活は別に不幸なものではなかった。当たり前の生活だったのだ。
「幸福じゃないんだろう?」
「だが、不幸でもない」
「それでも、幸せじゃないんなら、出て行って構わないだろう」
言って、晁蓋はひょいと飛び上がって童貫の横に身を寄せた。細腰に腕を回し肩を抱いて、かかえあげてしまう。
「ッ!」
「昨日は、俺と必死で逃げてくれる呉用を連れて行くことしか考えてなかったから。全然、準備してなかったんだ」
でも、今日は晁蓋も準備をしてきたのだ。
一緒に逃げる気がなくて、下手したら抵抗する相手。―――それを担いで連れ出してしまうための、準備。
「だから、今日はあんたを連れて行く」
「私は―――」
「―――最悪、昨日のことのせいで酷く折檻されて、自力で起き上がれないような状態になっているかもしれない」
「それは、」
「それでも連れて行けるように、準備してきたから」
呉用はあんたのこと心配していると、晁蓋は言った。
「俺だって、気になってた。―――だから、あんたがどう言おうと、幸せでない場所から連れ出してやるよ」
※ ちなみに、畢勝のずっと思い焦がれて欲しがっていた“後宮の女(ひと)”というのは、童貫のことです。
※ 後宮にいる女性なら誰でもいいのではなくて、ずっと“童貫”が欲しかった。
※ そのこと、高球を初めとした周囲の誰もがちゃんと知っていて、知らないのは童貫本人だけです。
Comment
Trackback
TrackbackURL